風俗営業等許可申請

1.はじめに

 このページでは、許可申請のあらましについて触れていきます。実際にご相談いただく場合に、本ページのような細かい知識を覚えていただく必要は、ほとんどありません。ページの一番最後の業務の流れにもあります通り、書類作成や営業所の計測はすべてこちらで行うか、あるいは外部の専門家に手配いたします。ただし、営業許可をいただくために、こういった理由により椅子を替えて欲しい、スライダックスにテープを貼らせてもらいたいなどをお願いする場合があります。そういった場合には、こちらの説明を補足する意味として、ページをご覧いただきたいと思います。

2.風営法許可申請の全体像

 一口に風営法許可申請といっても1種類ではなく、また接待飲食という部分に限定しても、営業の種別は以下の通り6つの種類に分かれています。たくさんありますので、赤字で示した部分を確認しながらお読みいただけると、分かりやすいかと思います。

 

 ● 1号営業

     定義:キャバレー、待合、料理店、カフェその他設備を設けて客の接待をして、客に遊興又は

        飲食をさせる営業

      ▼一般的なスナックやバー、ラウンジはこれにあたります。

 ● 2号営業

     定義:喫茶店、バーその他設備を設けて客に飲食をさせる営業で、照度10ルクス以下のもの

        (1号営業として営むものは除く)

      ▼1号営業と同じサービスを提供していても、店が暗いと2号営業になります。そのため、

       お店の設計段階で照明のセレクションは重要な要素の1つです。

 ● 3号営業

     定義:喫茶店、バーその他設備を設けて客に飲食をさせる営業で、他から見渡すことが困難

        あり、かつその広さが5㎡以下である客席を設けて営むもの

      ▼1号営業と同じサービスを提供していても、個室やついたてによる小さな個別スペースが

       あると3号営業になります。インターネットカフェや個室居酒屋などが代表例です。

 ● 4号営業

     定義:マージャン屋、パチンコ屋その他設備を設けて客に射幸心をそそのかすおそれがある

        遊戯をさせる営業

      ▼1~3号営業とはうってかわって、麻雀やパチンコ、パチスロ(回胴式遊技機)の営業を

       する場合のお話です。ジャンルとしてはギャンブルにあたるかもしれませんが、そもそも

       お金やモノを賭けるギャンブルは、刑法上禁止された行為です(刑法185条、賭博

       罪)。あくまでゲームの一環としての営業となります。

 ● 5号営業

     定義:スロットマシン、テレビゲーム機その他の遊技機で、本来の用途以外の用途として射幸

        心をそそるおそれのある遊技に用いることができる者を備える店舗、その他これに

        類する区画された施設において当該遊技設備により客に遊技をさせる営業

      ▼ゲームセンターを営む場合は、こちらになります。定義にもありますが、分かりやすく

       ゲームセンター」として営業している場合以外にも、ゲームコーナーとしてある程度の

       面積を占めている場合も、5号営業許可が必要になります。また、ゲームにも種類が

       ありますが、実物を体験できるようなドライブゲーム、飛行機操縦ゲームのほか、もぐら

       叩きといったゲームについては規制の対象から外されています(解釈運用基準第3の  

       2)。とはいえゲームセンターを営む上で人気の格闘ゲームなどを外すことは困難と

       思われますので、ゲームセンターといえば5号営業、という認識で問題ありません。

 ● 特定遊興飲食店営業

     定義:ナイトクラブその他設備を設けて客に遊興をさせ、かつ客に飲食をさせる営業(客に

        酒類を提供して営むもの)で、深夜(午前0時~午前6時)に営業を行うもの(風俗

        営業にあたるものは除く)

      ▼定義には具体例としてナイトクラブが挙げられていますが、その他の例としてはショー、

       ダンス、カラオケ、スポーツの映像による観戦などがあります。

 

 本稿では、代表的な第1号営業について触れていきます。

3.全体の流れ

 細かい部分を確認する前に、ご依頼をいただいてから許可までの流れを確認します。

 

 

(1)ご依頼と書類作成

 ご相談をいただいた際に、書類の収集をご協力いただく必要があります。お預かりした書類に基づき、申請書類を作成していきます。

 

(2)写真撮影・計測

 営業所の寸法を書いた書面(求積図)については、外部の測量士さんにお願いをすることになります。それとは別に、営業所で使用している照明やカラオケ、客席の様子などを撮影させていただきます。ここで撮影した写真も、申請書類の作成に使用します。

 

(3)提出・受領

 営業所を管轄する警察署へ書類を提出します。警察署によりますが、手引きや解釈運用基準に書いていないような指摘をされる場合があり、書類完成後も補正・再提出がやむを得ず生ずる場合があります。

 

(4)検査

 無事書類が受領されると、警察署から委託された風俗環境浄化協会から営業所へ、検査が入ります。営業所の図面が実際の営業所の寸法と違っていないか、見通しを妨げるようなもの(1メートルを超えるついたてやテーブル、イスなど)がないかなど、細かく確認をされます。指摘があった場合、撤去ないし交換をしなければ、許可が下りないことになります。

 

(5)許可

 検査に合格すれば、許可証が発行されます。

 

 

 書類をご用意いただく期間、書類を作成する期間、風俗環境浄化協会からの連絡を待つ期間などをすべて含めると、およそ2か月ほどの期間を要します。そのため仮に書類を全部揃えていただいていたとしても、「来週からのオープンに間に合わせたい」といったあまりに短期間のお話にはお応えいたしかねます。とはいえ2か月という期間はあくまで目安ですので、できるだけ早く、というご要望には可能な限りお応えするようにいたします。

4.1号営業許可申請

(1)許可が必要となるような飲食店(接待の定義)

 すでに述べた通り、第1号営業とは、「キャバレー、待合、料理店、カフェその他設備を設けて客の接待をして、客に遊興又は飲食をさせる営業」です。前半は具体例なので分かりますが、後半は一般的な単語を使っています。これらのうち、「接待」をハッキリさせる必要があります。

 

 接待という単語を調べると「客をもてなすこと」とありますが、具体的に何をどうすれば「接待」に

あたるのかはハッキリしません。そこで、すでに登場した解釈運用基準(正確には、「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律等の解釈運用基準について」という通達です)の第4をみると、接待とは以下のようなものとされています。

 

  定義:歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなすこと

 

  具体例:①談笑・お酌等

      ②ショー等

      ③歌唱等

      ④ダンス

      ⑤遊技等

      ⑥その他(客と身体を密着させたり、手を握る等客の身体に接触する行為)

 

  よって、例えば女性が男性客にお酌をし、会話をするようなラウンジは「接待」にあたりますが、

 一般的な居酒屋のように基本的には料理を提供するだけ、といった形態の場合は「接待」にはあたら

 ない、ということが分かります。 

 

(2)許可がもらえない場合

 許可を得て営業をしようとしても、今すぐには許可をもらえない場合があります。実際申請書類に添付する書類には、許可の基準(風営法第4条)の一部に該当しないことを誓約する書面があります。風営法だけでも11個の基準があり、より具体的なものまで見ていくと施行規則の58個の犯罪も見ていく必要があるので、一部を抜粋します。感覚としては、破産はしていないか、逮捕されたことはないか、くらいのニュアンスで問題ありません。

 

  ●破産手続開始決定を受け、復権していない場合

  ●1年以上の懲役もしくは禁固刑に処せられ、または次の犯罪を犯して罰金刑に処せられ、それから

   5年経っていない場合

     ・公然わいせつ罪

     ・賭博罪

     ・未成年者略取・誘拐    など

  ●アルコール、麻薬、大麻、あへん又は覚せい剤の中毒者

  ●心身の故障により風俗営業の業務を適正に実施できない者

 

 いざ申請をしてこういった事態が発覚すると、犯罪関連ですと5年経過までお待ちいただく、アルコール中毒の症状があるようならば治療していただくなど、一つ一つ対処していくほかありません。

(3)営業できない地域

 ここまでの要件などをすべて満たして、準備万端となっても、まだ問題があります。表題の通り、開業を予定している地域によっては営業を認められないことがあるのです。風営法は、地域について以下のように定めています。

 

風営法第4条2項2号

 営業所が、良好な風俗環境を保全するために特にその設置を制限する必要があるものとして政令で定める基準に従い都道府県の条例で定める地域内にあるとき

 

 ここからは各都道府県によって異なりますが、奈良県では以下のように定められています。

 

奈良県風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する条例

第三条 法第四条第二項第二号に規定する条例で定める地域は、次に掲げるとおりとする。

  一 第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、第一種中高層住居専用地域、第二種中高層

   住居専用地域、第一種住居地域、第二種住居地域、準住居地域及び田園住居地域。ただし、法第

   二条第一項第一号から第三号まで及び第五号の営業に係る営業所については、第一種住居地域、

   第二種住居地域及び準住居地域のうち、道路に隣接する地域その他の地域で奈良県公安委員会規則

   (以下「公安委員会規則」という。)で定める地域を除く。

  二 次に掲げる施設の敷地(これらの用に供するものと決定した土地を含む。以下この号において

   同じ。)の周囲百メートル(当該施設の敷地が商業地域にある場合で、その商業地域に営業所を設置

   するときは、五十メートル)の区域

    ア 学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第一条に規定する学校

    イ 図書館法(昭和二十五年法律第百十八号)第二条第一項に規定する図書館

    ウ 児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)第三十九条に規定する保育所   

    エ 就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律(平成十八年法律第

     七十七号)第二条第七項に規定する幼保連携型認定こども園

    オ 医療法(昭和二十三年法律第二百五号)第一条の五第一項に規定する病院及び同条第二項に

     規定する診療所のうち患者を入院させるための施設を有するもの(以下「病院及び有床診療所」

     という。)

 

 とてもややこしいので、端的に言うと、

  ●住宅地域での営業はNG

  ●学校や図書館、保育所、病院や診療所の近くはNG

 ということになります。

 

 条例の3条1号に書かれている地域は、都市計画法という法律で決められている地域のことです。営業所の地域がどれにあたるのかは、市町村役場へ行けば、手数料を支払うことで証明書(用途地域証明書)を出してくれます。

 また、3条2号の施設が100メートル以内にあるかどうかについては、営業所のあらゆる部分から100メートルという意味です。近くに学校や病院などがある場合は場所を改める方が無難です。

(4)営業時間

 営業時間についても、風営法や条例は規定しています。具体的には、以下の通りです。

 

 ●深夜(午前0時~午前6時)は営業禁止(風営法13条柱書

 ●12月21日~12月31日までは、県全域で午前1時まで(条例第4条1項、2項、3項

 ●奈良市大宮町6丁目では、午前1時まで(条例第4条1項、4項

 

 なお、これらの規制は「風俗営業」という冒頭で上げた1号~5号営業のことを規制しているため、深夜においてお酒を販売する深夜酒類提供飲食店営業がNGというわけではありません。

(5)営業所の構造・設備

 申請を行う風俗営業の種類によっても異なりますが、1号営業についての基準は以下のように定められています(風営法施行規則第7条条例第35条)。

 

 ●床面積:和風の客室なら一室9.5㎡以上、その他のものは一室16.5㎡以上

 ●客室内部が営業所外部から容易に見通せないもの

 ●客室内部に見通しを妨げる設備を設けないこと

 ●客室の出入り口に施錠の設備を設けないこと(営業所の出入り口を除く)

 ●営業所内の照度が5ルクス以下とならないよう維持されるため必要な構造または設備を設けること

 ●騒音・振動の数値が、営業所の地域ごとに一定の数値以下(45~60デシベル)となるような

  構造・設備を設けること

 

 基準内の、見通しを妨げる設備は、1メートルを超えるものがないかが基準となってきます。代表例としてはついたてですが、他の例としてはスタンドライト、バーカウンター、椅子などがあります。また、実際に見通しを妨げるかどうかとは別に、仕切りという意味で設置した半透明の暖簾なども、検査が入った場合に疑義が生じることがあります。指摘を受けた場合は、大人しく外さざるを得ません。

 そのほか、いわゆるスライダックスを設置していることが大半であるかと思われますが、こちらも照度5ルクス以下にできてしまう設備であるため、問題となります。

5.申請手数料

 1号営業許可申請については、24,000円を警察署に納める必要があります。

6.料金・手数料等

 1号営業から5号営業まで、いずれの許可申請についても150,000円(消費税別)で承ります。

 また料金とは別に、求積図がない場合には測量士さんに求積図を作成していただくための費用、上記4の(3)で述べた地域の証明書(用途地域証明書)の取得に関する費用、建物の登記事項証明書の取得費用などがかかってきます。