相続手続の概要

1.はじめに

 ご家族のどなたかが亡くなった場合であって、その方が何らかの財産をお持ちであるならば、相続が発生します。相続は生きている間に何度もお目にかかるものではなく、多くの方はその内容について熟知されていないのではないかと思われます。そこで、基本的な事柄について、ここでは解説を行います。遺言については、別途遺言の項目で触れることとします。

2.相続される財産

 財産と相続について、民法は次のように規定しています。

 

民法896条

相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りではない。

 

 この文章を読めば、相続される財産とは、「被相続人の財産に属した一切の権利義務」ということになります。つまり、銀行の預金や土地家屋だけではなく、亡くなった方が持っていたよく分からないお土産品、果ては借金なども、相続されることになります。

3.相続人

生き残った人が相続をすることになりますが、意外な人が相続人になったり、なれなかったり、ということが起こりえます。そこで、次は誰が相続人になれるのかを見ていきます。

 

(1)順番

 亡くなった方が遺言を残していれば、基本的にはその通り相続がされますが、遺言書がない場合が大半だと思われます。そのような場合は、法律上次の順番で相続分が決定されます。

 

   (配偶者)

    子ども  →  直系尊属  →  兄弟姉妹

 

 配偶者とは旦那さんか奥さんのこと、直系尊属とはお父さまとお母さまのことを指します。配偶者の方だけは特別で、後に相続分の箇所で述べるように、生きていらっしゃれば相続人となれます。

 

(2)代襲相続

 ここまでの考えをもとにすると、例えば先に相続人が亡くなっていたケースでは、(1)によれば次の順位の方が相続することになるはずです。

 話は変わりますが、そもそもなぜ相続という制度があるのでしょうか。相続制度の目的としては、残された方の生活の保障があります。突然一家の大黒柱が亡くなり、財産までなくなってしまうのでは、生活に困窮してしまうため、そのような事態を防ぐため、というわけです。また、この重要な目的を考えると、相続されるかどうかを偶然の事情により左右させるべきではありません。そこで、子どもと兄弟姉妹に限っては、すでに亡くなっていた場合でも、さらに子がいれば、その子が代わって相続をすることとなります(代襲相続)。すでに亡くなっている相続人の子の生活を保障する必要が出てくるためです。

4.相続分

 相続人が全ての財産を相続するということは分かりました。では、誰がどれだけ相続するのか。これについても、法律上定められています。簡単にまとめると、以下の通りです。

 

(1)子どもと配偶者(夫か妻のこと)が相続人

     ・・・各2分の1(1:1で分ける)

(2)配偶者と直系尊属(ご両親)が相続人

     ・・・配偶者が3分の2、直系尊属が3分の1(2:1で分ける)

(3)配偶者と兄弟姉妹が相続人

     ・・・配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1(3:1で分ける)

(4)子ども、直系尊属、兄弟姉妹が数人あるとき(配偶者がいない場合)

     ・・・全員同じ(頭数で割る=1:1:1で分ける)

 

 

 (1)から順に、どなたがいらっしゃるか、ご存命かによって、判断を行います。例えば、お子さんがいらっしゃらない家庭で旦那様が300万円を残して亡くなった場合、仮にご両親がご存命ならば、奥様が3分の2である200万円を、ご両親へは残りの3分の1である100万円が、それぞれ相続されます。

5.おわりに

 相続に関する法律上のポイントについては以上の通りです。当事務所では、預金の引き出しに必要な書類の収集や作成、すでに内容が決まっているのであれば遺産分割協議書の作成も致します。