建設業許可

第1.はじめに

 建設業許可と一口に言っても、様々な場面があります。初めて申請をする方、他府県で許可を得ており、エリアを拡大したいという方、あるいは許可を得ていて、その維持をなさりたい方、様々です。本ページでは、初めて申請をする方、許可を得てから何をするかおおまかに知りたい方に向け、記述を行います。

第2.建設業許可新規申請について

1.制度の概要

 建設業許可については、①そもそも「建設業」とは具体的に何なのか、②①にあたるならば、必ず取得しなければならないのか、という疑問が考えられます。一言で述べるならば、①建設業法3条2項に掲げられた、2種類の一式工事と、27種類の専門工事のことである、②①の業種を営んでいても、必ずしも必要ではない、ということになります。これらの点について、簡単に説明を加えていきます。

2.①「建設業」の内容

 すでに述べた通り、建設業には2種類の一式工事と、27種類の専門工事が含まれます。一式工事というのは耳慣れない言葉ですが、専門工事とは異なる、総合的な企画、指導、及び調整のもとに土木工作物又は建築物を建設する工事のことを指します。「一式」というと、建築に関する一式すべて、というようにも取れますが、要するにプロデューサーやディレクターのような立場ということです。実際に工事現場で役者として活躍するのは27の専門工事業者であると考えていただければ、概ね間違いはありません。

 そして、2種類の一式工事と27種類の専門工事とは、以下の通りとなります。

 

<一式工事>

 土木一式工事、建築一式工事

<専門工事>

 大工工事、左官工事、とび・大工・コンクリート工事、石工事、屋根工事、電気工事、管工事、タイル・れんが・ブロック工事、鋼構造物工事、鉄筋工事、舗装工事、しゅんせつ工事、板金工事、ガラス工事、塗装工事、防水工事、内装仕上工事、機械器具設置工事、熱絶縁工事、電気通信工事、造園工事、さく井工事、建具工事、水道施設工事、消防施設工事、清掃施設工事、解体工事(※)

 

※平成28年6月1日より、とび・大工・コンクリート工事から解体工事が独立して、1つの業種となりました。建物の解体について許可を取りたいと考えておられる方は、解体工事として許可を取得することとなります。

3.②許可を取るべき業態

 建設業許可を受ける必要がある工事については、「軽微な工事」である場合を除く、とされています。この「軽微な工事」とは、建設業法3条1項及び建設業法施行令1条の2では、以下の通り定められています。

 

<建築一式工事>

 ①工事1件の請負代金の金額が、1,500万円に満たない工事

           または

 ②のべ面積が150㎡に満たない木造住宅工事

 

<上記建築一式工事以外の工事>

 工事1件の請負代金の額が、500万円に満たない工事

4.補足

 建設業許可の種類として、営業所が1つの都道府県にのみある場合は「知事許可」、2つの都道府県にまたがる場合は、「大臣許可」の2種類があります。これは建設業許可申請の種類として2種類があるという意味であり、別個に何か申請が必要であるとか、そういった意味合いではありません。

 また、同様に「特定建設業許可」と「一般建設業許可」があります。「特定建設業許可」とは発注者から直接請け負った工事で、4,000万円(建築一式ならば6,000万円)以上の工事を下請けに出すという場合に取得しなければならないもので、「一般建設業許可」はその他の場合の許可を指します。特定建設業許可の場合、この後に述べる要件がさらに厳しいものとなります。なお、この特定か一般かどうかは、取得しようとする業種ごとに判断されます。

5.許可の要件

 許可を受けるためには、6つの要件をクリアしなくてはなりません。要件の細部は都道府県により異なることがありますが、奈良県においては以下のように定められています。

 

 ①法人の役員や個人の事業主等の1人が、経営業務の管理責任者としての経験を有すること

 ②営業所ごとに、条件を満たす専任技術者がいること

 ③請負契約を履行するに足りる財産的基礎又は金銭的信用を有していること

 ④定められた要件を満たす営業所があること

 ⑤使用人が請負契約に関して不正または不誠実な行為をするおそれが明らかな者でないこと

 ⑥欠格要件に該当しないこと

 

箇条書きでは正確に伝わりませんので、より詳細に述べます。

 

(1)①経営業務の管理責任者としての経験

経営業務の管理責任者とは、読んで字のごとく、経営の業務を管理する責任者として経験を積んでいるか、あるいは積んでいるのと同程度の能力がある人を指します。許可を受けようとする建設業でない業種についての管理責任者としての経験であっても認められますが、その場合は6年、許可を受けようとする建設業でも5年の経験が必要となります。

 

(2)②専任技術者

 営業所ごとに、技術者を専任で配置していることが求められます。経営業務の管理責任者と同様に要件がありますが、許可を受けようとする建設業について、

ア.その建設業の学科を卒業し、実務経験を積んでいるか

イ.10年の実務経験があるか

ウ.その建設業に関する国家資格を持っているか

大まかに言えば、これらのいずれかを満たしていれば、専任技術者たりえます。より具体的な条件については、ご相談いただいた際にご説明をいたします。

 

 

(3)③財産的基礎又は経済的信用

 注文内容を実行するためには、材料を購入する、従業員に給料を支払うなど、完成により注文者から代金を得るまでに、多くのお金がかかります。そこで、一定の資産があることが要件とされています。建設業許可事務ガイドラインによれば、一般建設業許可いついて、具体的には以下の通りとされています(奈良県の建設業許可申請の手引きについても同じ要件が明記されています)。

 ア.自己資本の額が500万円以上であること

 イ.500万円以上の資金調達をすることができること

 ウ.直前過去5年間、許可を受けて継続して営業した実績のあること

これらのいずれかの要件を満たせば、②の要件は満たされたことになります。

 

(4)④営業所

 建設業法でいうところの営業所は、請負契約を締結する場所が想定されています。とはいえ、契約書にサインをするための机だけがあるようなプレハブ小屋、あるいは他の業者と共同で使用していて、建物内が乱雑としている場合など、業務を行う上で問題が生じかねない形態もありえます。そこで、奈良県では営業所として、以下の要件を満たすことが求められています。

 

 ア.営業所の使用権利関係において、建設工事の請負の営業ができる事務所であること

 イ.請負契約の見積り、入札、契約等の実態的な業務を行っており、帳簿や契約書等が保存されていること

 ウ.主たる営業所の場合、経営業務の管理責任者、許可業種に対応する専任技術者が常勤する事務所であること

 エ.従たる営業所の場合、建設業法施行令第3条の使用人(契約締結などの権限を委任された営業所の代表者)及び許可業種に対応する専任技術者が常勤する事務所であること

 オ.事務所としての形態(机、電話、FAX、パソコン等の什器、帳簿等の保管スペース等)があること

 カ.営業所としての独立性を有すること

 キ.建設業許可業者である場合には、営業所において公衆の見やすい場所(室内でも屋外でも可)に建設業法で定められた標識を掲げていること

 

 実際にご相談をいただいた際には、営業所を拝見し、許可取得の見通しの参考にさせていただきます。

 

(5)⑤誠実性

 不正または不誠実な行為、というだけでは、どのような行為なのかはハッキリしません。この点について、「建設業許可事務ガイドライン」には、次のような記載があり、この疑問に対する解答となります。

 『「不正な行為」とは、請負契約の締結又は履行の際における詐欺、脅迫、横領等法律に違反する行為をいい、「不誠実な行為」とは、工事内容、工期、天災等不可抗力による損害の負担等について請負契約に違反する行為をいう。』

 

(6)⑥欠格要件

 欠格要件について心当たりがある場合、許可を受けることができません。また、この要件の一部は更新の場合にも関係します。いずれの場合においても、ご相談をいただいた際に確認をさせていただくこととなります。

6.許可の取得後

 以上までの要件を満たして申請を行い、何事もなければ許可の通知がなされます。晴れて(建築一式でなければ)500万円以上の金額で請け負うことになる工事もすることができるようになります。そうなると業務も忙しくなりますが、建設業許可とはこれでお別れ、というわけにはいきません。1年に1度、決算変更届という書類を提出したり、5年が経過する前に更新手続きをしたりする必要もあります。第2以降では、それらの点についてお話します。

第3.決算変更について

 先述の通り、決算変更届は年に1度提出をする必要があり、期間は事業年度経過後、4か月以内とされています。書類とは申しましたが1枚の紙というわけではなく、以下のような書類を整えて提出する必要があります。

 

 ア.変更届出書

 イ.工事経歴書

 ウ.直前3年の各事業年度における工事施工金額

 エ.財務諸表(貸借対照表、損益計算書等)

 オ.納税証明書

 

 ア~エは全て「このような用紙に記入するように」という様式が定められていて、その様式の通り記載すれば問題はありません。とはいえ、許可を得てから廃業するまで毎年のことであり、忘れずに必ずできるとも言い難いこと、工事の施工金額など、どのように書けばいいか分かりにくいこと、財務諸表についても、税理士さんからいただける青色申告決算書とは異なる書き方をする必要があるなど、問題はあります。あらかじめご依頼をいただければ、必要書類をお預かりし、作成をさせていただきます。

第4.更新について

 すでに述べた通り、更新は5年ごとに行わなければなりません。期限は許可後のちょうど5年、というわけではなく、有効期間満了の30日前までに行う必要があります。なお、知事許可(4でも述べましたが、営業所が同じ都道府県内で完結する許可です)の場合、3か月前から受付をしてもらえます。

 更新は、新規ほどではありませんが、やはりややこしい書類を多く用意する必要があります。ご依頼いただいた場合でも、必要な書類をご用意していただくことには変わりありませんが、こちらからご案内する書類をご用意いただくだけで、「どのような書類を見て作成するのか」、「この書類はどのように書くのか」、などとお調べいただく必要はなくなります。その間に業務に集中していただくなど、時間を有意義にお使いいただけます。

 また、更新に際しては毎年決算変更届を提出していることが必要となります。許可の内容に変更があったときも、都度変更届を提出していなければ、更新の手続きをすることはできません。なお、変更届等の提出が必要な届出事項は、以下の通りです。

 

【変更届の提出を要するもの】

 <経営業務の管理責任者>

  ・変更があった(別の人になった)とき

  ・婚姻等により、氏名が変わった場合

 <営業所の専任技術者>

  ・変更があった(別の人になった)とき

  ・婚姻等により、氏名が変わったとき

 <支配人、支店長、その他営業所の代表者(支配人以外)>

  ・変更があった(別の人になった)とき

 <国家資格者・監理技術者>

  ・変更があったとき

 <従たる事業所>

  ・新設を行った場合

  ・業種の変更(追加)を行ったとき

  ・廃止したとき

  ・従たる営業所の業種を一部廃止したとき

 <決算報告>

  ・事業年度を経過したとき

 <その他事業者に関する情報>

  ・商号、名称を変更したとき

  ・営業所の所在地を変更したとき

  ・資本金額に変更があったとき

  ・法人であれば役員等、個人であれば事業主または支配人が、婚姻等により氏名を変更したとき

  ・法人の役員等に変更があったとき

 

【届出書の提出を要するもの】

  ・経営業務の管理責任者の要件を満たす者がいなくなったとき

  ・営業所の専任技術者の要件を満たす者がいなくなったとき

  ・欠格要件に該当したとき

 

【廃業届の提出を要するもの】

  ・個人事業主が死亡したとき

  ・法人が合併により消滅したとき

  ・法人が破産手続開始の決定により消滅したとき(※1)

  ・法人が合併または破産手続開始決定以外の理由で解散したとき(※2)

  ・許可を受けた建設業を廃止したとき

     ※1・・・破産管財人が届出を行います

     ※2・・・清算人が届出を行います

第5.おわりに

 ごく簡単にではありますが、建設業許可における新規申請、決算報告、更新について述べさせていただきました。これらの申請そのものは事業主の方個人ですることも当然できます。しかし、多忙を極める中、申請先の各都道府県が発行している手引き(奈良県であれば、「建設業許可申請の手引き」という資料が奈良県のホームページにあります)に目を通し、さらに様式の記載要領を見ながら申請書類を作成する、という作業は非常に面倒なものです。申請にあたり、ご自身でご覧になって「面倒だな」「難しいな」と思われましたら、当事務所にてお手伝いをさせていただきます。